「実用的なのに想像力を掻き立てる。バタフライスツール」#7

当たり前だが、良い家具は値段が張る。だけど、せめてひとつでも部屋の風景の中に名作があるなら、どんな気持ちで目覚められるだろうか。そんな空間を彩る、時代を超えて愛される一品をご紹介。
今回の憧れの名品は「バタフライスツール」。


「スツール」というのは、背もたれの無い椅子のこと。昨今は、座るだけではなく飾り用など、さまざまなスツールが溢れています。ただ、本当に座りたくなる、使いたくなるものは少ないのではないでしょうか。そんな中、このバタフライスツールは使い手の日常に寄り添う貴重な名品です。

デザイナーの柳宗理さんは、「用の美」を意識したものづくりに取り組んでいました。「用の美」は、“道具は使われてこそ、美しい”という理論で、まさにこのスツールは使う人を思い浮かべながらつくられた実用的な逸品。2枚の板が互いに支え合うような構造で、蝶を表した形状は美しく、見る人の想像力を掻き立てます。

バタフライスツールは、戦後の資材不足な環境下で創られました。1957年にはミラノ・トリエンナーレで柳宗理ブースが金賞を受賞し、これをきっかけにバタフライスツールは世界的な評価を得ます。作り手の工夫と想いが国境・時代を越え、人々を魅了し続ける、日本のモノづくりの誇りと言える家具なのです。


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柳工業デザイン研究会 HP:https://yanagi-design.or.jp/